日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
食道癌術後の横隔膜ヘルニアの2例
松村 卓樹宮地 正彦齊藤 卓也大橋 紀文小松 俊一郎佐野 力
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 77 巻 6 号 p. 1389-1394

詳細
抄録

食道癌に対して,右開胸開腹食道亜全摘術,後縦隔経路胃管再建を施行後,横隔膜ヘルニアを発症した2例を経験した.ヘルニアの発症は,手術後2カ月と7カ月であった.2例とも術前に化学放射線療法を施行していた.CTで左胸腔内への腸管の脱出を認め,横隔膜ヘルニアと診断し緊急手術を行った.陥入した腸管に明らかな壊死所見はなかった.腹腔内へ腸管を戻し,1例は食道裂孔を部分的に縫合し,もう1例は食道裂孔縫縮に加えて大網被覆固定を行った.本2症例に特異的な原因としては,上腹部胃管周囲に広汎にセプラフィルム®を使用したことで食道裂孔周囲の癒着が軽度であったため,陰圧である胸腔内に腸管が引き込まれたこと,また術前の化学放射線療法による組織修復不良が考えられた.今後,鏡視下手術の増加に伴い,食道癌術後の横隔膜ヘルニアの発症は増加する可能性があり,食道裂孔の縫縮や横隔膜との固定といった予防策が必要と考える.

著者関連情報
© 2016 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top