2016 年 77 巻 6 号 p. 1400-1404
症例は80歳,女性.嚥下困難を訴え近医内科を受診.上部消化管内視鏡検査を施行したところ下部食道に狭窄を伴う潰瘍を認めたため,当院消化器内科に紹介され精査の結果,逆流性食道炎の疑いで内服加療を開始した.しかしながら症状の改善は認めず,手術を勧めたが本人・家族の強い希望で逆流防止弁付き金属ステントを留置した.症状は消失したが留置後3カ月頃から再度嚥下困難が出現し,ステントやや口側で全周性狭窄がみられ細径内視鏡も通過しなかった.ステントの内視鏡下での抜去は不可能と判断し,右開胸,腹腔鏡補助下に食道・胃部分切除を行い胃管にて再建した.病理組織学所見では悪性所見は認めなかった.現在術後1年6カ月,嚥下困難は出現していない.食道ステント留置後に肉芽組織増生によって再狭窄をきたし,食道切除を施行した報告は検索した限り認めなかった.文献的考察を加えて報告する.