日本臨床外科学会雑誌
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症例
放射線性腸炎の早期障害による小腸壊死の1例
宇根 範和岸本 浩史笹原 孝太郎田内 克典
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2016 年 77 巻 6 号 p. 1477-1481

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抄録

症例は67歳,男性.局所進行直腸癌に対して人工肛門を造設した後に,術前放射線療法を行う方針とした.全骨盤に対して総線量50Gy/25分割の強度変調放射線治療を施行したが,終了した5日後に腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.筋性防御を伴う下腹部痛と,腹部骨盤造影CT検査で腹水と骨盤腔にある小腸壁の造影効果の低下を認めた.放射線性腸炎による小腸壊死と判断し,同日緊急手術を施行した.回腸末端の小腸に著明な壁肥厚と暗紫色の変化がみられ,同部位を切除するように回盲部切除術を施行した.術後の経過は良好で,術後10日目に退院した.
放射線性腸炎の早期障害は可逆性の変化であることが多く,手術治療が必要になるのは稀である.今回,放射線性腸炎の早期障害による腸管壊死の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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