日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡手術が有用であった横行結腸が嵌頓した鼠径ヘルニアの1例
齋藤 裕人大畠 慶直西島 弘二宮下 知治二上 文夫西村 元一
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2016 年 77 巻 6 号 p. 1575-1579

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抄録

鼠径ヘルニアに横行結腸が嵌頓する病態はまれである.今回われわれは,腹腔鏡観察により嵌頓した横行結腸の切除が不要と判断し,meshを用いたtransabdominal preperitoneal approach (TAPP)法による鼠径ヘルニア修復術を行った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は77歳,男性.2日前からの右鼠径部膨隆,腹痛を主訴に当科を受診した.造影CTにて血流障害を疑わせる横行結腸を内容物とする右鼠径ヘルニアと診断した.発症から48時間経過しており,用手還納を行わず緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると,内鼠径輪に横行結腸と大網が嵌頓していた.大網の癒着を剥離し愛護的に横行結腸を牽引し嵌頓を解除したところ,嵌頓していた腸管の虚血や穿孔は認めなかった.腸管切除の必要はなかったため,meshを用いたTAPP法により鼠径ヘルニア修復術を行った.術後経過は良好で,術後13日目に退院となった.

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© 2016 日本臨床外科学会
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