抄録
妊娠中の稀な合併症を経験した.症例は28歳の女性.既往歴は特になし.妊娠31週で発熱と右上腹部に手拳大の腫瘤を自覚したため当院を受診した.MRIで腹壁にガス像を伴う液体貯留域を認め腹壁膿瘍と診断した.超音波ガイド下に経皮的ドレナージを行い,排膿後に腸液の流出を認めた.腹壁外瘻のため絶食とし完全静脈栄養で管理した.速やかに解熱し,腸液の排液も減少した.妊娠35週に帝王切開で出産した.その後,大腸内視鏡検査と注腸造影で盲腸とS状結腸に瘻孔を認めた.小腸造影で回腸末端に複数の狭窄と拡張,そして腸管外漏出を認めた.帝王切開から2週間後にCrohn病の疑いで回盲部切除・瘻孔切除・S状結腸部分切除を行った.切除標本では腸間膜側に多発する縦走潰瘍と狭窄を認めCrohn病と診断した.経過は良好で,児の発育も日齢31日に在胎日数相当の体重3,216gで問題なく退院した.