2017 年 78 巻 4 号 p. 881-887
症例は74歳,男性.左臀部の出血,疼痛,排膿を主訴に当科を受診した.16年前に臀部慢性膿皮症に対して切開排膿等の手術の既往があった.造影CTやMRIにて左臀部皮下を首座とする広範囲の腫瘍性病変を認め,遠隔転移は認めなかった.生検にて有棘細胞癌と診断された.腫瘍の出血や難治性膿瘍および疼痛のコントロールが困難であり,QOLやADL改善目的で腫瘍切除の方針とした.一期目に人工肛門造設を行い,局所の感染制御を行った.二期目に広範囲腫瘍切除術を行った.病理検査にて切除断端の陰性を確認した後に三期的に薄筋弁,後部大腿皮弁にて再建術を施行した.臀部や会陰部の創は汚染や体位の問題から管理が煩雑であり,広範囲切除後の再建方法に難渋する.今回,われわれは広範囲切除を行った臀部慢性膿皮症に続発した有棘細胞癌を経験した.臀部有棘細胞癌の治療方針や再建方法について文献的考察を含めて報告する.