抄録
症例は84歳,女性.20年前に狭心症に対して左内胸動脈(left internal thoracic artery:LITA)および右胃大網動脈(right gastroepiploic artery:RGEA)をグラフトとした冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting:CABG)を施行されている.腹痛の精査で施行した腹部CT検査では,CABGの際にRGEAの経路として作成された横隔膜の小孔を通して小腸が嵌頓していることが確認された.胸部3D-CTAおよび心臓カテーテル検査ではRGEAグラフトの血流は良好で,冠血流はRGEAグラフトに大きく依存していることが判明した.ヘルニア還納時にグラフトを損傷した場合,致命傷となる可能性が高いと判断し,手術は小腸バイパス術のみを施行した.術後5カ月の経過でイレウスの再発や胸部症状の出現を認めていない.