日本臨床外科学会雑誌
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症例
強皮症に合併したBarrett食道癌の1例
洞口 正志齊藤 礼次郎川原田 康久保田 洋介榎本 好恭齊藤 研洞口 愛高橋 さつき
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キーワード: Barrett, 食道癌, 強皮症
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2019 年 80 巻 6 号 p. 1110-1114

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抄録

近年Barrett(以下バレット)食道癌の報告が散見されるが,発生過程が明確な症例報告は少ない.強皮症に合併した食道癌の報告もまれである.症例は62歳の女性,肺炎で入院中に肺塞栓症を発症,セントロメア抗体陽性,手背の皮膚硬化,レイノー現象,嚥下障害から限局皮膚硬化型全身性強皮症と診断された.その後も持続する嚥下障害に対し内視鏡検査を行い,胸部下部から腹部食道に病変を認め,生検組織では腺癌と診断した.以前に逆流性食道炎,バレット食道を認めており,バレット食道癌と診断,手術を行った.術後,反回神経麻痺を伴わない嚥下障害が持続し,嚥下機能検査で強皮症による消化管の蠕動低下が示唆された.3カ月程度自宅退院は出来たが,最終的には腸瘻使用を含めた医療行為を拒否し288病日永眠した.バレット食道癌の発生過程を推察させ,強皮症に合併した食道癌治療において消化管機能不全の重篤さを感じた症例を経験した.

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© 2019 日本臨床外科学会
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