日本臨床外科学会雑誌
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症例
停留精巣を合併した84歳鼠径部interparietal herniaの1例
林 尚子古橋 聡金光 敬一郎馬場 秀夫
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2020 年 81 巻 10 号 p. 2139-2145

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抄録

症例は84歳,男性.右鼠径部膨隆を主訴に近医を受診.右鼠径ヘルニアの診断で当院へ紹介となった.右鼠径部に膨隆あり,右陰嚢は空虚であった.CTで右陰嚢に精巣は認めず,停留精巣合併鼠径ヘルニアと診断し,前方到達法で手術を施行した.ヘルニア嚢は,内鼠径輪より脱出し,外腹斜筋を貫き,外腹斜筋上の皮下脂肪織内に存在していた.右精巣は陰嚢内になく,萎縮した精巣がヘルニア嚢先端に固着しており,停留精巣を伴うinterparietal herniaと診断した.高齢で,悪性腫瘍の合併の可能性を考慮し,右精巣摘除術,ヘルニア根治術(Marcy法)を施行した.

停留精巣合併の成人鼠径ヘルニアは稀で,また,鼠径部のヘルニアの中でもinterparietal herniaは極めて稀な疾患である.本邦において,停留精巣を伴った鼠径部interparietal herniaの成人報告例はなく,自験例が初の報告である.

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