2020 年 81 巻 11 号 p. 2260-2267
幼少期に開腹歴のある67歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に来院し,イレウスの診断にて緊急入院.経鼻胃管で減圧し軽快するものの,食事開始の度に再燃を繰り返した.造影CTでは回盲部付近の腸管狭窄を認め,減圧での治療の限界と判断し待機的手術適応とした.腹腔鏡手術で腸閉塞の解除を試みたが,右下腹部で側腹壁と小腸,小腸同士の癒着の範囲が広く開腹手術に移行した.一塊となった小腸は浮腫状で回腸壁腸間膜側に多発白色結節を認め,狭窄を呈し悪性疾患が疑われた.可能な限り病変部を全て含むように回腸終末部小腸を22cm切除.病理報告にて小腸壁に粘膜下層を主座とする結節が9個認められ,NET(G1)の診断を得た.本邦では小腸NETの頻度は低く,腸閉塞の手術において多発病変が指摘された報告は少ない.本疾患がかつてカルチノイドと呼称されていたため,小腸カルチノイドおよびNETの症例の文献的考察を行い報告する.