2020 年 81 巻 11 号 p. 2273-2284
症例は72歳,男性.突然の便秘と水様性下痢を主訴に当院内科を紹介受診.S状結腸から直腸に及ぶ狭窄型虚血性腸炎の診断となった.CTにて腸間膜静脈主幹部の著明な狭小化を認め,大腸の血流は拡張した辺縁静脈を介して門脈に流入していた.
外来にて経過観察されたが,症状の改善はなく,腹部膨満感,排便切迫症状も出現し,外科へ紹介,腹腔鏡下切除術施行.術後の病理学的所見によりidiopathic myointimal hyperplasia of the mesenteric veinsの診断となった.現時点で症状の再燃なく経過は順調である.
虚血性腸炎を代表とする虚血性腸疾患は,腸管粘膜の微小循環障害により惹起される病態と考えられるが,成因に関する病態生理は非常に複雑である.虚血性腸疾患は,今後更なる病態生理の追求や病理学的な検討の上,個々の症例を蓄積することで成因に基づく病態生理学的分類を確立できる可能性がある.