2020 年 81 巻 3 号 p. 588-591
症例は57歳,女性.10年前から白線ヘルニアを指摘されていたが,時折自覚する上腹部正中の膨隆以外に症状なく経過していた.3日前から続く上腹部の膨隆と疼痛を主訴に,当院を受診した.腹部CTで膨隆部の腹壁に約1cm大のヘルニア門と脂肪成分に包まれた臍静脈の脱出を認め,白線ヘルニアの肝円索嵌頓と診断した.用手還納は困難であり緊急手術の方針となった.開腹下に行い,ヘルニア門の修復は単純縫合閉鎖とした.術後経過は良好で術後9日目に退院となった.白線ヘルニアの肝円索嵌頓例は本邦での報告は自験例を含め4例と非常に稀であり,術前診断に難渋した報告例もある.白線ヘルニアに対する予定手術では,腹腔鏡手術やメッシュ使用の報告が増加傾向にあるが,臓器嵌頓に対する緊急手術は自験例と同様に開腹下の腹壁縫合閉鎖によるヘルニア根治術の報告が多く,今後は緊急手術時の腹腔鏡手術やメッシュ使用の有用性を検討する必要性があると考えられた.