2020 年 81 巻 7 号 p. 1248-1254
症例は69歳の女性で,主訴は左乳頭発赤.来院時,左乳輪は痂皮化していた.理学所見・画像所見上左乳癌を疑って検査を進めていたが,左乳頭の痂皮所見を認めることから左乳頭部の皮膚生検を施行したところ,乳房Paget病と診断された.左乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.センチネルリンパ節は陰性であった.病理組織学的検査で乳房Paget病と最終診断された.ホルモンレセプターはER,PgRともに陰性で,HER2は(3+)であった.術後補助療法は施行せず,無再発で経過観察中である.乳房Paget病は確定診断に至るまで時間を有することがあり,乳頭・乳輪病変を認めた場合は積極的に皮膚生検を行う必要がある.確定診断が得られれば治療は一般の乳癌に準じて施行されており,浸潤の有無により予後も規定されるが,発生機序など不明な点も多い.また,乳癌取扱い規約第18版1)によると,1mm以上の間質浸潤を認めるPaget病は浸潤癌に分類されると明確に定義された.