2020 年 81 巻 7 号 p. 1273-1277
めまい改善目的の体操(「めまい体操」)が鎖骨下ペースメーカー電池部露出の原因と考えられ,延長リードで低侵襲な電池植え込み部位変更が奏効した1例を経験した.
症例は71歳,女性.めまい等を主訴に完全房室ブロックの診断でペースメーカー植え込み術が施行され,その5カ月後に本人が電池部の露出に気付き,緊急入院となった.入院後の各種検査などで感染やアレルギー等の関与は否定的であり,ペースメーカー植え込み後も持続するめまい症状に対して,その改善を目的に市販の単行本を参照に自己判断で開始した「めまい体操」が原因で,電池部露出に至ったと判断した.準緊急手術で露出した電池のみを除去し,新規電池植え込みは延長リードを用いて皮下脂肪層の豊富な同側乳房下へ変更した.植え込み側の上肢や肩関節の運動あるいは体操が原因でペースメーカー電池部露出に至る症例もあるので,植え込み後の管理では,運動時の創部の観察を行うべきである.