日本臨床外科学会雑誌
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症例
食道穿孔が疑われたZenker憩室内異物(義歯)の1例
宇野 耕平吉永 和史栗原 英明矢永 勝彦
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キーワード: Zenker憩室, 義歯, 食道穿孔
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2020 年 81 巻 7 号 p. 1284-1288

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抄録

食道穿孔を疑うZenker憩室内異物(有鈎義歯)を経験したので報告する.症例は84歳,男性.来院の1週間前に義歯誤飲を自覚したが,自然排泄を期待して自己判断で経過観察していた.頸部痛が持続し,食事摂取も困難なため来院した.頸胸部CTで頸部食道に義歯と食道左壁から連続する気腫像を認め,食道穿孔が疑われた.義歯は内視鏡で摘除可能であり,全身状態は安定していたため保存的に加療を行った.穿孔部の評価目的に施行した食道造影検査で咽頭食道憩室(Zenker憩室)が指摘された.有鈎義歯誤飲は,鋭利なクラスプ(鈎)が食道粘膜に刺入することで内視鏡での摘除が困難となり,さらに食道穿孔を併発して外科的治療が必要となることが多い.比較的稀な病態とは考えられるが,食道異物の診療を行う際は,Zenker憩室の併存と憩室内での異物停滞を念頭に置いて診療に当たることで,過大侵襲な治療を回避できる可能性がある.

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