2020 年 81 巻 7 号 p. 1329-1333
症例は63歳,男性.上部直腸癌精査時のCTで,腸間膜に長径70mm大の不整形,内部に石灰化を伴い造影効果のある嚢胞性腫瘤を認めた.リンパ管腫,GISTを鑑別診断として,直腸癌手術と同時に嚢腫摘出術を施行した.嚢腫は終末回腸から130cm口側の小腸間膜に不整形の腫瘤として存在し,小腸との連続性は認めなかった.小腸間膜の血管を温存する格好で,完全切除は容易であった.摘出した嚢腫は80mm×45mm×25mmで,内部には黄色の粘液性物質と透明の漿液性物質が混在していた.病理検査で嚢腫壁に粘液を有する円柱上皮を認め,腸間膜粘液性嚢胞腺癌と診断された.腸間膜嚢腫は比較的まれな疾患であり,嚢腫に悪性所見を伴うことは極めてまれである.われわれは上部直腸癌術前に偶然発見された無症候性小腸腸間膜粘液性嚢胞腺癌を経験したので報告する.