日本臨床外科学会雑誌
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症例
急性陰嚢症を契機に発見された大網原発デスモイド腫瘍の1例
齋藤 雄佑兒玉 英謙遠藤 文庫大塩 博島村 弘宗手島 伸
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2020 年 81 巻 7 号 p. 1418-1423

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抄録

症例は23歳,男性.起床時に左鼠径部から陰嚢にかけての痛みが出現し,徐々に疼痛と陰嚢腫大が増悪してきたため,当院に救急搬送された.腹部CTで左外鼠径ヘルニアを認め,ヘルニア嚢内に大網と径65mmの充実性腫瘤を認めた.また,陰嚢超音波検査にて左精巣捻転も疑われたため緊急手術を施行した.

陰嚢縫線を切開して精巣鞘膜を開くと,鞘膜内に大網と連続した腫瘍を認めた.左精管と左精巣動静脈が大網と共に720°捻転し,左精巣の色調不良を認めた.捻転解除後,色調は改善したため左精巣は温存した.大網を結紮処理して腫瘍を摘出した後,前方アプローチでUltraPro® Hernia Systemを用いたヘルニア修復術を行った.摘出標本は95×60×60mmの充実性腫瘍で,病理組織検査では大網原発デスモイド腫瘍と診断された.今回われわれは,急性陰嚢症を契機に発見された比較的稀な疾患である大網原発デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する.

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