2020 年 81 巻 7 号 p. 1429-1434
今回われわれは,上腰ヘルニア嵌頓による腸閉塞に対して腹腔鏡下嵌頓整復および上腰ヘルニア修復術を行った症例を経験したため報告する.症例は95歳の女性で腹痛のため近医を受診し,腸閉塞の診断にて当院を紹介受診した.左腰背部に約10cm大の膨隆を認め,腹部CTで下行結腸の左上腰ヘルニア嵌頓による腸閉塞の診断となり,用手的還納できず手術の方針となった.全身麻酔下に右半側臥位,3ポートの腹腔内アプローチによる腹腔鏡手術を行った.下行結腸を受動,牽引し体外から用手圧迫併用にて腹腔内に脱出臓器を還納した.ヘルニア門を全周性に確認,周囲約3cm程度追加剥離し,円形メッシュを留置,ダブルクラウン法にて固定し,手術終了した.上腰ヘルニアはまれであり,鏡視下手術の報告は少なく,腹腔内アプローチ,腹膜外アプローチなど報告があるが,どの術式が適しているかは決まっていない.若干の文献的考察を加え報告する.