日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡手術を行った19歳女性の卵巣滑脱ヘルニア嵌頓の1例
市川 健田中 穣橋本 真吾川北 航平奥田 善大近藤 昭信
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2021 年 82 巻 11 号 p. 2084-2088

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抄録

症例は19歳,女性.2年前に左鼠径部の腫脹と疼痛が出現したが自然軽快していた.今回,6日前より同様の症状が出現し疼痛が増強したため,当科を受診した.身体所見では左鼠径部に圧痛を伴う腫瘤を触知した.血液検査では炎症反応上昇を認めず,腹部US・CTで卵巣の鼠径ヘルニア嵌頓と診断した.徒手整復は困難で,緊急で腹腔鏡下手術を施行した.術中所見では左内鼠径輪に卵巣が嵌頓しており,内鼠径輪周囲の腹膜を切開して嵌頓を解除した.卵巣は正常卵巣でヘルニア嚢の一部を形成しており,卵巣滑脱ヘルニア(L1型)と診断した.滑脱しなくなるまで卵巣周囲を剥離し,腹膜切開部の修復と内鼠径輪の縫合閉鎖を行った.若年成人女性の卵巣滑脱ヘルニアは稀であるが,腹腔鏡手術は正確な診断,整復,修復が可能であり,妊孕性の上でも有用な方法と考えられた.

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