日本臨床外科学会雑誌
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症例
膿瘍ドレナージ後に待機的腹腔鏡下虫垂切除術を行った妊娠時虫垂炎の1例
五十嵐 高広川口 英之青木 真彦小島 正夫水沼 仁孝田村 光
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2201-2207

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抄録

症例は35歳,女性.1週間前からの右下腹部痛を主訴に当院を受診した.受診時に妊娠12週4日であった.腹部超音波およびMRIを施行し,盲腸背側に5cm大の膿瘍形成を伴う急性虫垂炎と診断.胎児被曝に十分留意し,同日超音波ガイド下経皮的膿瘍ドレナージ術を施行.ドレナージにより膿瘍腔は著明に縮小,33日後,妊娠17週2日に腹腔鏡下虫垂切除術を施行.術後経過は良好で,術後第6病日に退院.遺残膿瘍はなく,胎児の発育や妊娠経過に特記所見は認めず,妊娠41週3日に通常分娩にて2,880gの男児を出産した.今回われわれは,膿瘍形成を伴う妊娠時虫垂炎において経皮的膿瘍ドレナージ術を先行し,妊娠経過に影響を及ぼすことなく腹腔鏡下虫垂切除術を施行しえた.妊娠時虫垂炎に対してドレナージ後に待機的腹腔鏡下虫垂切除術を行った報告例はなく,文献的考察を含めて報告する.

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