日本臨床外科学会雑誌
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症例
大網静脈に腫瘍栓を形成した再発肝細胞癌の1例
伊藤 千尋坂元 克考岩田 みく田村 圭高井 昭洋北澤 理子高田 泰次
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キーワード: 肝細胞癌, 腫瘍栓, 大網静脈
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2021 年 82 巻 12 号 p. 2270-2274

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抄録

症例は87歳,男性.前医で肝S6の肝細胞癌破裂に対して後区域切除術を施行され,脈管侵襲を伴う中分化型肝細胞癌と診断された.明らかな播種結節は認めなかった.術後16カ月で肝切離面に結節が出現し,その後の5カ月で1cmから7cmと急速に増大したため,肝細胞癌再発と診断した.術前画像で,肝外静脈への腫瘍栓が疑われた.手術目的に当院へ紹介され,肝部分切除術を施行した.被膜に包まれた腫瘍が肝S5切離面から尾側に突出しており,腫瘍に癒着した大網内に,腫瘍から腹壁方向に向かって伸びる直径約5mmの索状組織を認めた.大網静脈への腫瘍栓と考え,合併切除した.播種を疑う結節は認めなかった.大網血管内の腫瘍塞栓を伴う低分化型肝細胞癌と病理学的に診断した.

肝細胞癌は門脈や肝静脈以外の体循環系静脈にも腫瘍栓を形成することがあり,腫瘍と大網を含めた隣接臓器との癒着が疑われる症例では,慎重な術前診断と術式検討が必要である.

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