2021 年 82 巻 4 号 p. 742-748
症例は60歳,男性.2012年に大腸憩室炎を発症した際の腹部超音波検査で9cm大の嚢胞性腫瘤を指摘され当院を紹介となり,リンパ管腫の疑いで数回の画像検査を行ったのち,経過観察されていた.2018年に健診で,腫瘤が11cm大と増大傾向を認め,精査加療目的に当院を再度受診した.腹部造影CTにて右側腹部に最大径11cmの嚢胞性病変を認めた.腹部症状は認めなかったが増大傾向にあり,悪性腫瘍の可能性も否定できず手術を施行した.開腹所見では,空腸間膜に腫瘤を認めたが腫瘤は膵鉤部と高度癒着があり,境界が不明瞭で膵原発も否定できなかったため,膵部分切除を含む腫瘤摘出術を施行した.腫瘤の内腔にはリンパ液が充満しており,病理組織学的に腸間膜リンパ管腫の診断であり,膵周囲脂肪組織への進展も認めた.膵鉤部合併切除を行った小腸間膜リンパ管腫はこれまで報告がなく,本邦報告例を含めた文献的考察を加え報告する.