日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
腹腔鏡下に手術した結腸間膜動脈破裂をきたした分節性動脈中膜融解症の1例
関 裕介田嶋 勇介米山 さとみ坂田 宏樹秀村 晃生鈴木 宏幸松田 出
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 82 巻 4 号 p. 761-766

詳細
抄録

症例は43歳,女性.突然の強い腹痛・下痢のため救急搬送された.来院時ショック状態で,Hb値 10.7g/dl値と貧血を認めた.腹部造影CTで中結腸動脈左枝に数珠状変形を認め,横行結腸間膜から網嚢に至る巨大血腫形成および腹水貯留を認めた.中結腸動脈左枝破裂に伴う腹腔内出血を疑い,緊急手術の方針とした.腹腔鏡下手術にて血腫除去の後,中結腸動脈左枝からの分枝血管の破綻をクリッピング止血した.術後経過は良好で,術後第15日に軽快退院となった.術後の腹部血管造影で中結腸動脈左枝の他,脾動脈・左結腸動脈・S状結腸動脈に数珠状変形・多発動脈瘤を認めた.内山らの臨床的診断基準にsegmental arterial mediolysis (SAM)と診断した.SAMは腹部動脈破裂による腹腔内出血を引き起こす比較的稀な疾患であるが,SAMに対する腹腔鏡下手術の報告はこれまで極めて少ない.自験例では良好な術後経過が得られたことから,腹腔鏡下手術が有効な治療であったと考えられた.

著者関連情報
© 2021 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top