2023 年 84 巻 9 号 p. 1403-1410
症例は47歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に受診し,コアニードル生検(CNB)で左乳癌と診断された.生検翌日から穿刺部位の発赤疼痛を認め,創部感染と判断し抗菌薬内服やドレナージ処置を行ったが改善を認めなかった.各画像検査では腫瘍と生検穿刺部の表皮との間に連続する軟部陰影を示し,同部位に対して切開組織生検を行い,悪性所見を認めた.腫瘍は強い炎症を伴って増悪し,化学療法や放射線治療に対して抵抗性を示し,初診から176日後に死亡した.CNB直後の症状を感染所見と判断したため,腫瘍細胞の急激な進展と炎症波及による所見と診断するまでに時間を要したことで,化学療法開始が遅延しdown stageに至らなかった.これまでCNB後のneedle tract seedingの症例の報告は多数認めるが,本症例のような急速に画像所見の増悪変化や臨床所見を伴い進行を認めた症例の報告はない.本症例はこれまでのneedle tract seedingとは異なる機序による腫瘍の炎症性波及が腫瘍増悪の原因となったと考えられた1例として報告する.