2025 年 86 巻 9 号 p. 1211-1216
腹部外科領域の術後は,腸管の授動操作により内ヘルニアの原因となる間隙を生じる可能性がある.今回,泌尿器科手術後のS状結腸間膜と後腹膜をヘルニア門とした稀な内ヘルニアの1例を経験したため報告する.症例は92歳,男性.膀胱癌に対し膀胱全摘・尿管皮膚瘻造設の術後20日目に腹痛と嘔吐を認め,腸閉塞の疑いで当科に紹介となった.腹部造影CTで骨盤内小腸にcaliber change・closed loopを伴う腸閉塞と,S状結腸の限局的な狭窄を認めた.絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を行った.術中所見として,尿管皮膚瘻造設の際に左尿管を通すために剥離したS状結腸間膜と後腹膜が癒着を形成しておらず,患者左側(後腹膜側)から侵入した100cmの小腸が,その間隙に嵌入し壊死していた.壊死小腸を切除再建し,間隙は縫合閉鎖した.鏡視下手術を中心に,結腸の授動操作で生じた間膜間隙の予防的閉鎖は一般的に行われていないが,本症例のような内ヘルニアの発生リスクを考慮し,その解剖学的背景や特徴的な画像所見を理解することが肝要である.