人工知能
Online ISSN : 2435-8614
Print ISSN : 2188-2266
人工知能学会誌(1986~2013, Print ISSN:0912-8085)
要素間相互作用の動的離隔を内包した創発的システム設計法の構築(創発システム, <特集>「人工知能分野における博士論文」)
中山 功一
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2006 年 21 巻 1 号 p. 115_2

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抄録

人間万事塞翁が馬という諺がある.人生, 何が幸いして何が災いするかは予測し難く, 物事の幸不幸は決め難いものである, という意味で使用される.従来の科学や哲学には, すべての事象は要素に分けられ, 要素とその間の関係が分かれば全体について理解できるという考え方があった.還元主義と呼ばれるその考え方では, 個々の要素とその関係を分析すれば"風が吹けば桶屋が儲かる"というメカニズムも解明できると考える.さて, "塞翁が馬"といわれる世の中で, 万物の事象をすべて要素に還元し, 解明することは可能なのであろうか?著者は, システムを構成する要素間において相互作用の予測や知覚が困難であるという意味で複雑なシステムの設計には, 新たな方法論が必要であるとの立場から, 複雑なシステムを複雑なまま設計する非還元主義的な設計法の構築について研究している.本論文では, まず, 要素間相互作用の動的離隔を内包した創発的システム設計法を提案し, 提案手法による設計が有効な対象領域(クラス)を明らかにした.また, ソフトウェアからなるシステムと, ハードウェアからなるシステムのそれぞれに対する設計手法を提案した.さらに, システムにおける要素の適応を, 遺伝的アルゴリズムにおける遺伝子個体の進化的学習に置き換えて捉え, 提案手法を解析した.最後に, 提案する方法論による創発的システム設計が有効である具体的な例について述べた.

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© 2006 人工知能学会
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