全日本鍼灸学会雑誌
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原著
鍼通電刺激が反復運動誘発性酸化ストレスに及ぼす影響
堀之内 貴一林 知也木村 啓作吉田 行宏片山 憲史矢野 忠
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2012 年 62 巻 1 号 p. 38-46

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抄録

 【背景・目的】スポーツでは日々の反復運動は必須となる。 このことから反復運動によって誘発される酸化ストレスに鍼灸が与える影響について検討する必要がある。 本研究では反復運動誘発性酸化ストレスに対する鍼通電刺激の影響について検討を行った。
【対象・方法】健常成人男性6名を対象とし、 同一被験者に対して無刺激対照 (CONT) 群、 鍼通電 (EA) 群の2群を設けた。 1日20分の高強度負荷運動を連続して3日間行わせた。 代謝の指標に血中乳酸濃度 (BLL) を、 酸化ストレスの指標に血漿中過酸化脂質 (LP) 濃度を測定した。 また、 主観的疲労感の指標に疲労感のVASを用いた。 全ての実験項目は同一条件下で3日間連続して実施し、 EAは両側内側広筋に2Hz、10分間、被験者の至適強度にて、 3日間ともに運動負荷直前に行った。
【結果】BLLは運動負荷中・直後値がCONT群と比較し、 EA群で3日間ともに低値の傾向を示した。 LP濃度はCONT群では1日目の負荷前値に比し、 2、 3日目の負荷前値が増加傾向を示したのに対し、 EA群では1日目の負荷前値に両日ともに復していた。 また負荷後のLP濃度は、 CONT群に比し、 EA群で3日間ともに低値の傾向を示した。 疲労感のVASは、 負荷直後値がCONT群と比較しEA群で有意に低値を示した。
【考察・結語】CONT群のLP濃度は、 運動負荷前値が3日間で増加する傾向を示していたことから、 反復運動により過剰なLPが付加され、 体内に蓄積される可能性が示唆された。 一方、 運動負荷中・直後のBLLと負荷後のLP濃度は、 CONT群よりもEA群で低値の傾向を示したことから、 EAは代謝効率の促進やLPの増加を抑制させ、 疲労感を減少させる可能性が考えられた。
 以上より、 EAは反復運動誘発性の酸化ストレスの蓄積を抑制し、 全身疲労感を軽減させることから運動時のコンディショニングに有効である可能性が示唆された。

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© 2012 社団法人 全日本鍼灸学会
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