【はじめに】灸は、 古来より今日まで、 日本人の健康に寄与してきた。 しかし、 灸の近年の実情の実態報告は少ない。 そこで、 灸の実態を明らかにする目的で、 きゅう師を対象にアンケート調査を実施した。【方法】鍼灸分野の学術団体、 業界団体などを通じてきゅう師にアンケート協力の依頼をし、 Google Formsで回答してもらった。【結果】1,507名の有効回答があり、 「臨床歴20年以内」が67.8%で、 「開業」 が71.9%であった。 「学術団体所属」 は43.6%、 「業界団体等の所属」 は69.3%であった。 行っている灸法は、 「知熱灸」 が66.3%、 「透熱灸」 が53.4%などであった。 加工灸については、 68.6%が台座灸、 37.0%がスモークレス灸を使用していた。 灸の効果は、 「とてもある」 か 「どちらかといえばある」 と考える灸臨床家が計98.9%であった。 患者から 「灸を拒否された経験」 は、 患者が灸施術を受ける前が45.6%、 灸施術を受けた後が33.2%であり、 「熱さ」、 「火傷」、 「煙が不快」 などがその理由であった。 今後、 セルフケア灸普及のために必要な取り組みは、 1,495名中、 「臨床研究による有効性の実証」 (75.6%)、 「基礎的研究による科学的裏付け」 (68.3%)、 「啓蒙活動」 (63.9%) などの回答があった。【考察】施灸法は、 社会の意識の変化に応じて、 直接灸から間接灸へと、 実施の割合が変化してきている事が分かった。 灸臨床家の多くは、 灸には効果があると考えて施術を行っていた。 また、 熱さ、 火傷、 煙などが、 患者が治療を敬遠する要因であることが再確認された。 今後、 「安全性」 の保持と、 灸の臨床上の有効性や科学的裏付けの研究、 啓蒙活動などが、 灸の普及・発展のための課題であると考えられた。
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