全日本鍼灸学会雑誌
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最新号
全日本鍼灸学会雑誌
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追悼
巻頭言
シンポジウム
  • (日本アスレティックトレーニング学会とスポーツ鍼灸委員会合同シンポジウム)
    福嶋 涼子, 安東 由仁, 森本 麻衣子, 大岩 孝子
    2026 年76 巻1 号 p. 4-13
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムでは、 鍼灸師やAthletic Trainer (以下AT)、 とりわけ今後スポーツ現場での活動を望む若手鍼灸師やATに対して、 スポーツに関わる女性について理解が深まることを目的とした。 登壇されたそれぞれの女性がこれまで関わってきた選手・患者への取り組み、 仕事や家庭への考え方を紹介して頂きながら、 スポーツに関わる女性の働きやすさ、 活きやすさ、 Well-beingに関わる問題点ならびに改善策などを議論していきたい。  まず福嶋先生は、 選手自身が身体について知ることがベストパフォーマンスへ繋がると述べられた。 現在は、 ATの経験を生かしてトレーニング指導ができることが鍼灸院勤務でも強みになっており、 患者のWell-beingを実現することが、 ご自身のWell-beingへつながっていると紹介された。  安東先生は、 スポーツ実施率の男女差などを例に挙げ、 女性は様々な理由から継続的にスポーツを行うハードルが高いと述べられた。 そこでご自身の経験を活かし、 鍼灸師やATが世代やライフステージに応じたケアや運動の場を提供することで、 女性のWell-beingは大きく向上しうるのではないかと提案された。 一方で、 他者へのケアを 「やりすぎ」 てしまうことで自身のWell-beingに悪影響を及ぼしてしまうこともあるため、 施術者はまず自身のWell-beingを体現したうえで同じ視点を仲間と共有することが大切であると指摘された。  森本先生からは、 トップアスリートとしての経験をもとに、 選手との関わり方について我々が注意すべき点を選手の年代別に紹介された。 また現在の女性スポーツ従事者の取り巻く環境を例に挙げ、 優秀な鍼灸師・ATが継続して現場で働ける環境を構築する必要性、 さらに鍼灸師やATに対するリカレント教育の重要性を提案された。  最後に大岩先生からは、 ATから医師を目指された経歴や現在について紹介された。 それらから、 今自分のできることと向き合い、 継続していくことが明日の為になると述べられ、 さらにWell-beingを維持するためには、 周囲の人と良好な関係を築くことが精神的な支えとなると提案された。  女性ホルモンを軸とした身体的な変化や家庭内、 あるいは社会的な役割の変化などにより、 女性スポーツ従事者がWell-beingの状態で活躍するには課題が多い。 しかしながら、 アスリートのパフォーマンス向上だけでなく一般患者の健康やWell-beingにも鍼灸師やATの知識やスキル、 経験は活用できる。 鍼灸師およびATには社会貢献への期待が大きいといえる。

パネルディスカッション
  • 中永 士師明, 加島 雅之, 松本 淳
    2026 年76 巻1 号 p. 14-29
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    本シンポジウムは、 本学会として初めて救急・集中医療における鍼灸をテーマに取り上げたものであり、 最前線で診療にあたっている方々に登壇をお願いした。 最初に、 中永士師明氏から、 救急・集中医療が対象とする疾患は多岐にわたり、 患者のためひとつの医療体系にこだわらず長所を活用して診療に当たっている立場が述べられた。 鍼灸治療は、 最初に加療することができることが利点とした。 そして実際の応用例として、 救急外来での急性腰痛症、 集中治療室での肺炎・呼吸不全、 敗血症、 破傷風などが示された。 鍼灸の有用性を理解してもらうための教育と啓発活動の重要性についても言及があった。 加島雅之氏は、 入院患者の約半数が救急センター経由という超急性期病院の漢方医の立場で、 常勤鍼灸師との取り組みについて発表があった。 患者が、 生命の危機を脱した後の回復の過程での消化器症状、 精神・神経症状、 運動器、 疼痛、 呼吸・循環器、 体力低下や倦怠感になどに対する鍼灸治療について述べた。 これら回復を阻む要因に対する鍼灸治療は有効なアプローチであることの言及があった。 松本淳氏は、 高次救命治療センターの集中治療患者に対する補完的治療として鍼治療を行ってきた立場から、 鍼治療は人工呼吸患者の呼吸状態に対し有用となる可能性、 せん妄の軽減効果の示唆、 意識障害患者の覚醒度や応答反応の向上に寄与していることが示唆されるとの報告があった。 鍼灸治療は、 慢性疾患を対象とするとのイメージが強い。 しかし、 本シンポジウムを通じて、 救急・集中医療における鍼灸は、 西洋医学との併用により、 患者の回復において有用である可能性が示唆されたことは大変に意義深い。

症例報告
  • 富澤 麻美, 近藤 亜沙, 伊藤 雄一, 井田 剛人, 伊東 秀憲, 星野 卓之, 伊藤 剛
    2026 年76 巻1 号 p. 30-37
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    【緒言】嗅覚障害の病態は、 現在でも明らかになっていないことが多くその診断方法と治療法は十分に確立していない。 また原因不明の嗅覚障害は、 難治性で予後不良の場合が多いとされている。 今回、 長期化した原因不明の嗅覚障害に対して北里方式経絡治療と迎香穴などに知熱灸を行い症状の改善を嗅覚同定能力研究用カードキットで評価し得た一例を経験したので報告する。 【症例】68歳女性。 主訴は嗅覚障害。 X-20年に、 嗅覚低下を自覚し、 鼻中隔弯曲症に対する手術後に嗅覚が回復した。 しかしX-1年7月頃から食べ物のにおいがわからなくなり、 耳鼻科にて嗅覚障害と診断された。 ベタメタゾンリン酸エステル点鼻やフルチカゾンフランカルボン酸点鼻や小青竜湯エキスが処方されたが、 効果がみられないため、 当センターを受診した。 【治療・経過】嗅覚障害に対し、 鍼灸治療を週に一回行い、 OEを用いて評価した。 脈診に基づき北里方式経絡治療の本治法と共通基本穴に加え、 標治法として迎香 (LI20)、 合谷 (LI4)、 解渓 (ST41) に置鍼、 志室 (BL52) に灸頭鍼を行った。 3診目のOEは12点満点中4点。 上迎香 (Ex-HN8)・印堂 (Ex-HN3)・神庭 (GV24) に知熱灸を3壮行った。 6診目のOEは5点。 迎香・印堂・神庭・合谷・解渓に置鍼、 知熱灸5壮をしたところ治療室のもぐさのにおいがわかった。 11診目のOEは6点となり、 患者は前回よりもOEを開いた瞬間からにおいがわかったと喜んでいた。 患者の希望により鍼灸治療を終了した。 【考察・結論】長期間経過した原因不明の嗅覚障害に対して、 北里方式経絡治療と迎香穴などに知熱灸を行い、 その評価に嗅覚同定能力研究用カードキットを用いて改善を客観的に捉えられた症例を経験した。 今後はさらに安全な電気温灸器の使用などにて、 OEなどの客観的な臨床判定を取り入れつつ、 鍼灸治療の症例を集積していくことが望まれる。

解説
  • 松浦 悠人, 大川 祐世, 村橋 昌樹, 山下 仁
    2026 年76 巻1 号 p. 38-55
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    このCAse REport (CARE) for acupuncture日本語版は、 原版の英文を (公社) 全日本鍼灸学会臨床情報部エビデンス委員会が和訳したものです。 和訳に際し、 原版の著者らの承諾を得ています。 オリジナルのCAREガイドラインの解説 (大川 祐世, 石山 すみれ, 松浦 悠人, 山下 仁. 症例報告のためのCAREガイドライン. 全日本鍼灸学会雑誌. 2025; 75(1): 93-102.) もご参照ください。 なお、 本ガイドラインは鍼治療の症例報告を想定していますが、 灸治療による症例報告にも応用可能です。

国際学術交流
  • 皆川 陽一, 深澤 洋滋
    2026 年76 巻1 号 p. 56-64
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    世界鍼灸学会連合会 (WFAS) 2025年ストックホルム大会が、 2025年9月19日から21日にかけてスウェーデンのScandic Infra Cityで開催された。 本報告では、 第10期執行理事会第3セッションの概要および国際鍼灸学術大会の内容を整理した。 執行理事会では、 2025年度事業・財務報告、 臨床研究エビデンス・ブルーブック (2024-2025) の進捗、 国際標準策定の状況、 下半期テーマ別シンポジウム計画等が共有された。 また、 WFAS名称・ロゴの適正使用や設立40周年記念事業に関する提案が審議された。 学術大会では基調講演、 一般演題、 ワークショップ、 ポスター発表が行われ、 研究動向の整理と国際的な潮流の把握に資する機会となった。 今後、 日本としては国際標準化を含むWFASの動向を注視しつつ、 日本鍼灸の特性を踏まえた適切な関与と発信を継続する必要がある。

  • 瓜生 ゆかり
    2026 年76 巻1 号 p. 65-69
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    第21回国際東洋医学学術大会 (ICOM 21st) は、 2025年8月30日から31日にかけて、 伝統医学の科学的根拠の構築と国際的発展を目的として開催された。 大会のテーマは、 "Traditional Medicine: From Evidence-based to Integrative Medicine (エビデンスに基づく伝統医学から統合医療へ) " である。 本大会では、 AI技術の応用や診療データの標準化など、 伝統医学の近代化に関する国際的な取り組みが数多く報告された。  筆者は、 本大会において、 広島大学病院における緩和ケアでの鍼灸介入の実態とその有用性についての発表を行なった。 報告の骨子は、 倦怠感、 疼痛、 食欲不振など、 薬物療法では十分に対応が難しい症状に対し、 接触鍼を中心とした鍼灸介入が安全かつ有効に実施され、 複合的な苦痛の緩和に寄与したこと等である。

  • 日本鍼灸シンポジウム・漢方セッション
    鶴 浩幸, 粕谷 大智, 鈴木 雅雄, 廣瀬 桂子, 南雲 三枝子, 大川 祐世, 恒松 美香子, 中村 優, 脇 英彰, 松浦 悠人, 華 ...
    2026 年76 巻1 号 p. 70-80
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    2025年11月7-9日にかけてフランスのアンティーブにて、 ICMART (国際医師鍼灸学会) 世界大会が開催された。 今回のICMART世界大会では、 ICMARTにおいて初となる 「日本鍼灸シンポジウム」 や 「漢方セッション」 が行われたため、 これらの点を中心として、 ICMARTフランス大会について報告する。

  • 皆川 陽一, 脇 英彰, 三谷 直哉, 増山 祥子, 若山 育郎
    2026 年76 巻1 号 p. 81-88
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    2025年11月22日・23日に、 韓国・ソウルにてInternational Symposium on Acupuncture Korea 2025 (ISAK2025) が開催された。 本大会は、 「鍼灸研究:世界をつなぎ、 知識と経験を共有する」 をテーマに掲げ、 韓国、 日本、 台湾、 シンガポール、 ウズベキスタン、 ベトナム、 ノルウェー、 イギリス、 オーストラリアなど、 世界各国から研究者、 臨床家、 教育者が集まった。 また、 学会に先立ち 「Kyunghee University Tour」 として、 慶熙大学韓方院の見学の機会を得た。 本報告では、 ISAK2025の概要および慶熙大学韓方院の見学について報告する。

  • 松峰 理真
    2026 年76 巻1 号 p. 89-96
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    世界鍼灸学会連合会 (WFAS) と中国中医科学院の主催により2024世界伝統医学学会学術大会が、 2024年10月11日から13日にかけてイギリス・ロンドンで開催された。  2024年の大会テーマは、 「鍼灸の研究促進と臨床応用」 であり、 世界中の専門家が集結し鍼灸医学の今後の発展について議論がなされた。 また、 WFAS執行理事会は初日の11日午後に開催され、 2024年度の活動報告および2025年度へ向けての提案が審議された。  また、 2024年12月3日から4日にかけて世界保健機関 (WHO) の伝統医学戦略の実施の促進を図り、 国家レベルの大規模な2024世界伝統医学学術大会が中国の北京で開催された。 大会テーマは 「多様性、 継承、 革新:万人のための伝統医療」 であり、 世界各国の専門家や政府関係者が2000名以上集まり、 伝統医学の発展と国際協力について議論した。 今回、 WFAS中国からの招聘により、 各国の代表者との交流対談Exchange Dialoguesのパネリストとして登壇した。 本稿では、 2024WFASロンドン大会および世界伝統医学学術大会の2大会について報告する。

世界の鍼灸コミュニケーション
  • 変動する経済環境と政策動向のなかで
    フェニック 育恵
    2026 年76 巻1 号 p. 97-103
    発行日: 2026/02/01
    公開日: 2026/05/07
    ジャーナル フリー

    本稿では、 米国の補完代替医療 (CAM) における鍼灸の位置づけを概観し、 とくにニューヨーク市における鍼灸医療の実態と、 その外部環境の変化が施術院運営に与える影響を検討した。 近年、 米国ではオピオイド危機やメンタルヘルス対策を背景に非薬物的治療の需要が高まり、 鍼灸は CAM の中でも重要な選択肢として注目されている。 ニューヨーク市は多文化・高ストレス環境を特徴とし、 施術者数の多さに加え、 専門性の多様化や都市型需要の高さが際立つ地域である。 一方で、 物価・家賃の高騰、 輸入関税による備品・漢方薬材の価格上昇、 パンデミック以降の治安悪化など、 複合的な外部要因が鍼灸院経営に構造的な影響を及ぼしている。 2026 年に就任予定のマムダニ新市長が掲げる経済緩和策は事業環境改善への期待を生むものの、 実効性は今後の政策動向に左右される。 総じて、 ニューヨークの鍼灸環境は需要の高さと外部コスト上昇が並存する複雑な状況にあり、 持続可能性の検討には継続的な観察が必要である。 なお、 本稿で扱う 「鍼灸」 は、 英語の acupuncture に相当する概念を指す。

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