全日本鍼灸学会雑誌
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会頭講演
女性医療と鍼灸の可能性
第 68 回 (公社) 全日本鍼灸学会学術大会愛知大会特集
西尾 永司
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2019 年 69 巻 4 号 p. 246-253

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抄録

最近の医学部入試における女子差別や男女平等の度合いを示す 「ジェンダーギャップ指数」 で、 日本は149国中110位などいまだに社会的に女性は不利な立場に置かれている現状がある。 一方医学分野では、 1990年に米国の国立衛生研究所(Natonal Insitue of Health:NIH)に性差医療の医学研究を目的としたThe Office of Research on Women's Health(ORWH)が設置以降性差に関する医学研究論文は増加し、 女性医学が認識されている。 性差に基づいた女性特有の疾患傾向は循環器疾患、 自己免疫疾患、 腫瘍学、 精神疾患、 代謝疾患など多くの領域で明らかになりつつある。  鍼灸治療は西洋医学とは別の医学大系を持ち、 医学部教育で鍼灸治療の講義はほとんどなく多くの医師にとって未知の領域であることは想像に難くない。 未知な領域に対し敬遠し拒絶することは容易であるが建設的ではない。 東洋医学の一翼を担う漢方薬は私自身が医学部在籍当時講義はなかったが、 現在全国の大学医学部で漢方薬の講義は実施されており、 若い医師には漢方薬は身近な存在になってきている。 鍼は生体に対する機械的刺激、 灸は生体に対する熱刺激である。 そのメカニズムの基礎的論文が増加することで医師の鍼灸に対する理解が深まるであろう。 現在、 わが国の問題点として晩婚化による不妊患者の増加や出産数の減少、 又女性は生命寿命が長い一方で不健康期間が男性より長いことなど克服すべき課題が多い。 これらの課題に対し。 医師と鍼灸師が連携することで日本独自の優れた女性医療を発展させる可能性がある。

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