抄録
【目的】運動負荷により生じる情報処理時間の遷延化や注意資源配分量の低下に対する鍼刺激の影響について、 プラセボ効果の影響を除いた検討を行う事を目的とした。
【研究デザイン】クロスオーバーデザインの二重盲検法による無作為化比較試験
【セッティング】東京有明医療大学
【対象】健康成人男性15名 (21.1±0.9歳)
【方法】運動負荷には把持運動を採用し、 最大握力の40%強度での把持と休息を繰り返し、 2回連続で40%の筋力発揮が不可能になるまで行った。 P300の誘発には聴覚Oddball課題を用い、 運動負荷前後で記録を行った。 同一の被験者に対し、 本物の円皮鍼(円皮鍼群)とプラセボ円皮鍼(プラセボ群)による介入を、 実施順序をランダム化して行った。 介入部位は、 大椎と両側の神門、 足三里とした。 実験後、 介入のマスキングについて被験者と施術者にアンケートを行った。 なお、 割り付けは実験に参加しない者が行い、 被験者、 施術者及び測定者はその結果を知ることなく一連の実験を行った。
【アウトカム】事象関連電位のP300成分の潜時、 振幅を主要評価項目、 反応時間、 介入のマスキングを副次的な評価項目とした。
【結果】プラセボ群のP300潜時は、 運動負荷後に有意に延長、 P300振幅は運動負荷後に有意な減少が認められた。 一方、 円皮鍼群のP300潜時及び振幅は、 運動負荷前後の有意な変化は認められなかった。 反応時間は、 両群で運動負荷後に有意な延長が認められた。 κ係数は、 術者がκ=-0.06、 被験者がκ=0.66であった。 本研究において円皮鍼介入による有害事象は認められなかった。
【考察・結語】本研究の円皮鍼群及びプラセボ群の各指標変化は先行研究と同様であり、 その再現性が示された。 しかし、 κ係数の値から、 被験者マスキングが不十分であったことが示され、 今後、 プラセボ円皮鍼の信頼性や妥当性について多面的に検討する必要性が示された。