2002 年 52 巻 1 号 p. 43-48
インスリン依存型糖尿病に対する鍼治療では、根本治療はもとよりインスリンの減量も困難であると思われ、これまで治療効果の報告はほとんど見られない。
今回、本学診療所において、インスリン依存型糖尿病の発症原因を、全身の代謝障害による「虚証」状態が病態の根本であると推論して、難経六十九難など古典理論を基本とする鍼治療法を行ない、鍼治療前後6ケ月にわたり血糖値などの変化を経時的に観察した。
その結果、1症例ではあるが、古典鍼法によってインスリン依存型糖尿病患者の血糖値の正常値への減少傾向を観察すると共に、便秘や痺れ・冷えなどの随伴症状の改善を得た。これらの変化は古典鍼法前後では便秘に対する漢方薬処方以外では特に併用薬物は変わっていないこと、その他気象・社会的要因に変化が認められないことから、鍼治療の結果であると考えられる。