全日本鍼灸学会雑誌
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肩手症候群に対する鍼治療の一症例
封木 麻里安野 富美子横川 孝一會川 義寛福田 文彦坂井 友実
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2002 年 52 巻 4 号 p. 435-441

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抄録

肩手症候群 (Shoulder-Hand syndrome : 以下SHS) は患側上肢の疼痛と腫脹を主徴とした難治性の疼痛疾患であり, 片麻痺に合併したSHSはリハビリテーションの阻害因子となっている。今回われわれは, 脳血管障害後遺症の片麻痺患者で患側上肢の疼痛・腫脹・異常感覚などの症状を呈し, SHSが疑われた症例に対して, 症状の軽減ならびにリハビリテーションが円滑に行われるための補助療法として鍼治療を行い, その有効性と鍼治療による皮膚血流の変化について検討した。
治療は上肢の低周波鍼通電療法と置鍼術にて, 週2回の頻度で全14回行った。結果, ペインスケールおよび肩手症候群に特徴的な症状である腫脹, 異常感覚に軽減が認められた。また, 治療期間中3回の冷水負荷試験を行ったが, 回復異常は徐々に改善し皮膚温異常の改善も認められた。SHSの発症機序は末梢機序や中枢機序が関与し悪循環が形成されると考えられている。鍼治療により血流の改善・疼痛や腫脹の軽減が得られたことが悪循環を断ち切る手段となり, リハビリテーション・プログラムを円滑に進行させるための治療手段の一つになることが示唆された。

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