全日本鍼灸学会雑誌
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緩和ケア病棟における、東洋医学に基づいた温熱療法の試み
高士 将典
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2005 年 55 巻 4 号 p. 574-583

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抄録

【はじめに】われわれは、鍼灸医療の役割として1) 西洋医学各科との連携治療、2) 未病に対する治療、3) 緩和ケアの3つを実践してきた。今回、川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター・緩和ケア病棟 (以下PCUと略す) において「緩和ケアにおける鍼灸医療を実践する前段階の試み」として東洋医学的「証」に基づいた温熱療法を行った。
【対象】1999年6月から2001年3月までに、PCUに入院したがん患者74名を対象症例とした。その内訳は、男性36例女性38例で、平均年齢63.9±11.8歳であった。
【方法】治療は、電子温灸器CS-2000 (以下電灸器と略す) を用いた。治療の実際は、弁証によって選択した配穴の指示に従い担当看護師が施行した。
【結果】全症例74例の治療結果は、有効以上が51.3% (38例) であった。「痛み」を訴える対象例が多く58例で、その治療効果は、有効以上が55.2% (32例) であった。有効以上を示した表現は、「ドーンとした鈍い痛み」が多く「重いだるい痛み」「ズキーンと重い痛み」「脹った痛み」「刺す痛み」の順であった。
【考察】電灸器治療に期待される痛みは、1) 鎮痛剤でコントロールできない痛み、2) 担がん状態 (がんによる2次的なもの) や闘病生活による痛み、3) がんに関係ない痛みと推測される。またこれらの痛みは鈍い痛み (表現しづらい痛み) と考えられる。
またデータ的には現れないが、患者との一定空間時間の共有からスピリチュアル的なケアも行なえることや患者とのコミュニケーションから、いままで語らなかった話しを聞くことができケアに役立つ情報を看護師および医師にフィードバックできる、チーム医療としての一つの役割もあることが考えられた。
【まとめ】今回緩和ケアに参加することで、全人的苦痛の一つである身体的苦痛 (痛みや他の症状) のケアに貢献できることが示唆された。その中でも痛みに対して有用な結果が得られた。

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