全日本鍼灸学会雑誌
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新しい五行関係モデルの提唱 (第3報)
補瀉モデルによる『難経』六十九難の解釈
谷口 勝加藤 麦秦野 良厚
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2005 年 55 巻 4 号 p. 608-616

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抄録

東洋医学では、生体を小宇宙とみなし総合的な複雑系として捉えている。この複雑系を制御するために生体には五行のリズムが存在し、これがカオスに条件を付加するものとなって全体を保持している。したがって、五行に歪みが起こると生体に疾病を発症させることとなる。これに対して、『難経』六十九難では、まず五行の母子関係を利用した治療原則を挙げ、次いで正経自病に対する治療原則を記載している。そこで、これらを理解するために虚邪、実邪、及び正邪に対する治療モデルを構築し、モデルによって六十九難の解釈を試みた。
その結果、モデルにおいては相克関係に歪みのないことが治療を成立させる条件となっていることが明確となった。また、正邪の変化は正経自病に対する治療原則と共に、虚邪及び実邪に対する補瀉治療の成立条件を示すものと考えられた。このことから、六十九難は全体を通して相生関係を基盤とした治療原則であることが示唆された。

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