日本航空医療学会雑誌
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症例・事例報告
ドクターヘリで転院搬送した臍帯脱出の1例
菅谷 一樹小池 奈津美小野寺 誠伊関 憲
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2024 年 25 巻 1 号 p. 20-25

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抄録

 臍帯脱出とは、破水後に臍帯が産道に降りた状態のことである。臍帯脱出に陥ると、臍帯血流の減少から胎児予後が不良となるため、緊急帝王切開術が必要であり、一般的には長距離の転院搬送は選択されない。症例は23週の妊婦で、臍帯脱出を前医で指摘された。前医の新生児集中治療室の体制上、23週の早産児の対応が困難であるため、当院へ転院搬送の依頼があり、空路で片道約50kmの距離をドクターヘリで搬送した。搬送中は特記すべき続発症は認めず、前医の第一報から116分後に胎児を娩出した。ドクターヘリを用いた転院搬送は、搬送時間の短縮が見込める一方で、母体の体位制限や処置困難、処置物品の携行不可といった欠点がある。転院搬送手段については、産科救急医療の特殊性を踏まえたうえでの決定が望ましく、転院搬送にかかわる者すべてが、空路搬送と陸路搬送の利点と欠点を熟知しておく必要があると考えられた。

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