石川県能登地方を震源に発生した令和6年能登半島地震では、奥能登地域を中心に甚大な被害が発生した。多数の傷病者が発生するなか、道路は複数個所で寸断され陸路での搬送は困難をきわめ、航空医療搬送が重要な役割を担った。本災害では「大規模災害時におけるドクターヘリ広域連携に関する基本協定」に基づき中部ブロックからドクターヘリ派遣を受け、発災翌日より石川県立中央病院でドクターヘリ本部を運営した。まず問題になったのは人員不足であった。次いで離発着場の不足や冬の能登半島特有の天候不良、長距離搬送などの問題に直面した。空路搬送に不利な条件が重なった災害であったが、発災翌日から搬送を実施し、基本協定に基づく派遣終了までの45日間で98名を搬送し得た。ドクターヘリ本部への早期の人員派遣、支援DMATや他機関との連携、地域特性を理解した柔軟なドクターヘリ運用が重要と考えられた。