日本航空医療学会雑誌
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症例・事例報告
大雪山系旭岳でのスノーボードで生じた循環血液量減少性ショックを疑う外傷傷病者への北海道防災航空隊による病院前救護の経験
谷口 圭祐水野 浩利田村 豪高崎 竜希
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2025 年 26 巻 1 号 p. 27-33

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抄録

 冬季山岳地での外傷症例を経験し、示唆に富む症例と考え報告する。  50代男性、大雪山系旭岳の標高1,460m付近にてスノーボード滑走中立木に衝突し救助要請に至る。道防災ヘリにて傷病者発見し隊員降下、接触時意識清明、呼吸・循環正常、左下腿に活動性出血を伴う開放骨折を認めた。保温、圧迫止血を行うも容態変化、意識レベルJCS10虚脱、橈骨動脈を触知できなかった。寒冷環境下からバイタルサインの測定は困難であり、受傷機転及び継続観察から循環血液量減少性ショックを疑い輸液の指示要請を行った。機内で輸液を実施し輸液量120mLで地上の救急隊へ引き継いだ。  循環血液量減少性ショックを疑った外傷傷病者へ止血、保温に努め、機内で心停止前輸液を行った。北海道の冬季山岳地における外傷傷病者の救助活動は、止血、保温、寒冷環境下からの早期離脱、指示医の治療方針に沿った輸液を行い、外傷死の三徴の増悪を防ぐことが肝要である。

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