抄録
ここ数年, 女性医師の増加傾向が著しい. 平成16年度の新臨床研修医制度導入により, 従来の大学医局を中心とした労働供給システムが変化し, 病院現場における労働力不足が深刻になってきた. そのため, 病院の管理的立場での対策が取り上げられるようになった. 日本臨床麻酔学会第24回大会におけるシンポジウム 「女性医師の生産性」 が設けられたのもその意味があったと思われる. そもそも, 女性の労働生産性について考えるとき, 単なる生物学的な差をもって男性との差を論ずることはできない. 文化的・社会的背景からくる性別役割分担意識が大きく影響している. まず, 労働基準法など母性保護・育児支援に関する現行の法律の尊重が重要である. また, 文明国として男女共同参画社会の実現に向けての社会的・個人的努力が必要であり, そのためには医療現場におけるさまざまな工夫が期待される. そのような施策により, 女性医師の生産性は現在より高くなっていくと予想されるので, 現時点で女性医師に特有の社会システムを構築するのは時期尚早であろう.