日本臨床麻酔学会誌
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—日本臨床麻酔学会第25回大会 パネルディスカッション—
緩和医療とその治療:麻酔科医はどうかかわるか
関連痛を念頭においたがんの痛みの診断
冨安 志郎橋口 順康
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2006 年 26 巻 5 号 p. 561-569

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抄録

  がんが発生すると, がんの増大に伴う機械的刺激やがんが誘導した炎症細胞から放出される発痛物質により持続的な侵害刺激が発生する. やがて疼痛伝達系全体に感作が発生すると, 病巣から離れた皮膚の痛覚過敏, アロディニアなどの知覚異常, 立毛筋収縮や発汗などの交感神経刺激症状, 筋肉の収縮, 周囲の圧痛といったいわゆる関連痛が発生する. 内臓や骨などの深部体性組織に発生したがんでしばしばみられる現象で, 内臓や骨が侵害刺激を入力している脊髄レベルに同様に侵害刺激を入力している皮膚, 同脊髄レベルに遠心路核をもつ筋肉, 交感神経に症状が出現する. 痛みの部位に病巣がない場合は, 関連痛を念頭において異常のある皮膚, 筋肉のデルマトーム, マイオトームから責任脊髄レベルを同定し, そのレベルに侵害刺激を入力する内臓や骨の異常を検索することが病巣の早期発見につながる. また, 関連徴候として神経障害性疼痛様の知覚異常が出現することを知っておくことは鎮痛薬選択の意味から重要である.

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© 2006 日本臨床麻酔学会
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