抄録
硬膜外麻酔の適応が広がる反面, 術前に抗凝固療法を受けている患者の増加や術後の血栓予防療法の普及は, 硬膜外血腫の頻度を増加させる可能性を含んでいる. 硬膜外血腫はまれな合併症であるが, その頻度は対象となる疾患, 性別, 年齢などにより大きく異なり, サブグループでの検討が重要であることが明らかとなった. また, 1990年以前の小規模研究では発生頻度にバイアスが大きいことも指摘され, 正確なリスクを把握するためには今後さらなる大規模研究が必要である. 麻酔科医はもとより, 医療従事者および患者が硬膜外麻酔のベネフィットとリスクを十分に理解して, 硬膜外麻酔を応用することが重要である.