抄録
腹腔鏡下単純子宮全摘術中に二酸化炭素 (CO2) による気腹で, 動脈血CO2分圧 (PaCO2) が60mmHgを超える高CO2血症を認めた. 用手換気による過換気でPaCO2を40mmHgレベルに正常化することができたが, 再気腹時に左胸部から顔面に至る著明な皮下気腫が出現した. この際, PaCO2が約40mmHgの正常域にあったが, 皮下気腫の胸壁進展の兆候として, 心電図の II 誘導と III 誘導にT波陰転化とRSパターンが観察された. 本症例の肢誘導心電図電極は, 左足の代わりに左下側胸部に貼られていた. CO2気腹における II 誘導や III 誘導の変化は, 皮下気腫の胸壁への進展を示唆する可能性がある.