日本臨床麻酔学会誌
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日本臨床麻酔学会第28回大会 シンポジウム 心臓血管外科麻酔における薬物療法をめぐるControversies
心臓麻酔のコントロバーシー
脊髄保護:薬物療法の現状と未来
内野 博之田上 正柿沼 孝泰宮田 和人金子 恒樹濱田 隆太
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2010 年 30 巻 3 号 p. 366-381

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抄録

  動脈瘤に対する血管外科手術を扱う心臓血管麻酔における最も重篤な合併症である,対麻痺をいかに予防するかは重要な問題である.対麻痺発症により患者のその後のQOLは著しく低下し,術後生活は制限を受ける.対麻痺は,特に,胸部および腹部大動脈瘤手術に伴って発症しやすく,その原因となるのは術中の脊髄虚血と考えられている.殊に,胸腹部大動脈瘤の手術に伴う対麻痺には,脊髄への血液供給に重要な役割を担う血管であるアダムキーヴィッツ動脈の血流低下等による脊髄障害が深くかかわると考えられている.脊髄は,虚血時に灰白質および白質ともに障害を受け,運動神経細胞は遅発性に細胞死を起こすという特徴を有するが,その機構としては,脳と同様にグルタミン酸-Ca2+説,虚血後のグリア細胞の活性化やミトコンドリア機能不全などが関与している可能性が考えられた.特に,脊髄障害予防のための有効な薬物療法はいまだ確立されていないが,ミトコンドリアを標的とした薬物療法の確立の重要性が示唆された.

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© 2010 日本臨床麻酔学会
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