2010 年 30 巻 3 号 p. 393-397
中枢温36℃以下の軽度低体温は,約7割以上の手術患者に起きることが知られているが,1990年代後半よりその弊害が主要医学雑誌に報告されることで注目を浴びるようになった.しかし欧米の周術期低体温予防の認識度を調べてみると,周術期低体温予防のガイドラインは存在するが,弊害に対する認識不足等が原因でコンプライアンスが不十分な状況である.また,集中治療領域では重症患者の発熱に対する対応が問題となる.文献によると,重症患者の約5割以上に中枢温38.3℃以上の発熱がみられるとされている.米国で策定されている重症患者の発熱に関するガイドラインは,診断および治療について記載されているが,体温に関しては測定部位の推奨度のみで体温管理に関する記載はない.その理由として体温管理と患者予後を調べた多施設前向き研究がないことが一つの大きな要因である.今後,周術期低体温および発熱についての体温管理に関するガイドラインの作成,普及が望まれる.