2010 年 30 巻 7 号 p. 1054-1058
結核後遺症で,声門直下から気管分岐部に瘢痕性気管狭窄をきたした症例のバルーン拡張,ステント留置術の麻酔を経験した.高度かつ広範囲に狭窄があり,バルーン拡張時に長時間の無換気が予想されたため,ガス交換手段として体外循環を選択した.デクスメデトミジンで鎮静し,自発呼吸下に右大腿動静脈送脱血の経皮的心肺補助(PCPS)を開始し,全身麻酔を導入した.体外循環下でバルーン拡張術を施行後,狭窄部位に気管挿管し,PCPSを離脱した.後日,気管の浮腫が軽減したのちに,ステント留置術をデクスメデトミジン鎮静下,局所麻酔併用で施行した.著明な狭窄で換気困難が予測された症例に対し,体外循環を用いて安全な麻酔管理を行うことができた.