抄録
Rhoキナーゼは低分子量GTP結合タンパク質Rhoの標的タンパク質であり,細胞骨格制御,血管平滑筋収縮,各種細胞の形態変化・遊走,遺伝子発現などの生理機能に関与する.Rhoキナーゼ阻害薬の一つであるファスジルは,くも膜下出血術後の脳血管攣縮抑制薬としてすでに臨床使用されている.冠動脈攣縮などの心血管系の病態にRhoキナーゼ活性の亢進が深く関与しており,Rhoキナーゼ阻害薬がその病態を阻害・退縮させる可能性が報告されている.また虚血に対する神経保護効果や神経障害性疼痛抑制効果も報告されている.Rhoキナーゼ阻害薬は,種々の疾患の治療薬として有望であると考えられるが,周術期の臓器保護にどう活用するかは今後の課題である.