慢性痛患者は,周術期の痛みのコントロールが通常よりも困難となることが多く,術後の痛みが遷延するリスクも増大する.麻酔科医は,慢性痛患者ではより詳細な術前評価を要することを理解し,特にオピオイド使用患者に関しては,1日使用量を把握し,術中使用するオピオイドの種類,用量と術後鎮痛方法を検討しておくことが必要である.慢性痛患者の麻酔方法やオピオイド使用患者の麻酔管理に関する情報はまだ不十分であり,麻酔方法の選択,用量は個々の患者で検討する必要がある.不十分なオピオイド量は退薬症状を招く恐れがあり,オピオイドを使用中の患者には,急性期治療中安易にオピオイドを減量,中止するべきではないことを常に念頭に置かなければならない.