2017 年 37 巻 7 号 p. 731-734
脳腫瘍合併妊娠は非常にまれである.今回帝王切開術2時間後の痙攣を契機に,初めて脳腫瘍を指摘された症例を経験した.症例は33歳の女性.妊娠経過中に頭痛,嘔吐を認めたため妊娠悪阻を疑った.既往帝王切開術後妊娠のため,脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔にて帝王切開術を施行した.しかし手術終了2時間後,意識消失を伴う間代性痙攣を認め,頭部CT検査にて松果体腫瘍を指摘された.組織診断の結果,胚細胞腫瘍であり化学放射線療法を開始した.頭蓋内圧亢進は麻酔方法の選択に影響を及ぼす.妊娠後期における頭痛や嘔吐は,多くの場合は妊娠悪阻を疑うが,脳出血や脳腫瘍等のまれな頭蓋内器質的疾患の可能性を考慮する必要がある.