2017 年 37 巻 7 号 p. 790-796
2000年前後より,欧米を中心として術後の早期回復を目的とした多角的な周術期管理戦略が相次いで報告された.その後Enhanced recovery after surgery®(以下ERAS)に代表される周術期プログラムとして形を成し,日本でも認知されてきた.過去のいくつかの研究では,術中の糖質やアミノ酸投与による異化反応の抑制効果やインスリン抵抗性の改善効果が報告されている.一方で,術中エネルギー基質投与に伴う高血糖は術後合併症の増加にもつながることから,術中侵襲や糖代謝も考慮しつつ,投与量に注意を要する.自験例やこれまでの先行研究を踏まえ,術中の栄養療法の問題点と可能性について考察する.