2019 年 39 巻 5 号 p. 620-625
硬膜外無痛分娩による母体死亡が複数発生したことを受けて,安全な硬膜外無痛分娩提供体制の構築が求められている.母体死亡事例の解析からは,局所麻酔薬中毒と,くも膜下誤注入による全脊髄くも膜下麻酔が原因として明らかとなった.安全に硬膜外無痛分娩を行うためには,蘇生用器具の準備,試験注入と少量分割注入,開始後30分間の観察とその後の定期観察,継続したモニタリングが重要である.分娩中に硬膜外カテーテルが血管内やくも膜下腔に迷入する可能性を常に念頭に置き,痛みの出現や下肢運動神経遮断の増強,放散痛の出現に注意を払い,迅速に対処することが安全な硬膜外無痛分娩の提供に欠かせない.