抄録
自然気胸で約3週間虚脱した肺を急速に拡張させたことにより再膨張性肺水腫を生じ,重篤な急性呼吸不全・ショック・DICに陥った症例を経験した.通常の人工呼吸ではPaO2は低下しPaCO2は上昇した.その機序としては,死腔換気・シャント血流の増大が考えられた.ショックの原因としては,患側肺毛細血管透過性亢進による循環血液量減少性ショックと低酸素血症性アシドーシスによる心機能抑制が考えられた.また再膨張性肺水腫の機序としては,hypoxic pulmonaryvasoconstrictionによる毛細血管基底膜障害の関与が強く示唆された.これに対して,分離肺換気を施行したところ,PaO2・PaCO2はただちに改善し,ショックからも容易に離脱できた.重篤な再膨張性肺水腫には分離肺換気は非常に有効である.